「契約をとってくる」と表現する会社って・・・

こんにちは、百壽総合研究所です。

先日の記事では、私が銀行員時代に「やりがい」を失い、転職を決意したお話をお届けしました。

「お客様に喜んでもらえる仕事がしたい」。

その一心で転職した生命保険会社では、多くのお客様から感謝の言葉をいただき、幸いにも心から「やりがい」を感じる日々を送ることができました。

しかし、プライベートな事情で再度転職した保険代理店では、同じ「保険」を扱う仕事にもかかわらず、その充実感は跡形もなく消え去ってしまったのです。

一体、何が違ったのか?

今回は、その大きな要因の一つとなった、社内で使われる「言葉」についてお話ししたいと思います。

■「企業理念」という美しい建前

どちらの会社も素晴らしい企業理念が掲げられています。
最近では、どの会社も「共感」をキーワードに、企業理念やパーパス、ミッション・ビジョン・バリューを前面に打ち出していますが、正直、そこから”やりがい”ある職場かどうかを見出すのは難しいように思います。
誤解を恐れず言うなら、それは「建前」だからです。
その会社の「本音」は、もっと現場の生々しい部分に隠されている気がします。

■ 「お預かりする」vs「とってくる」

その「本音」が最も端的に現れていたのが、社内で日常的に使われる「言葉」でした。
やりがいを感じられた保険会社。 そこで徹底されていたのは、お客様にとって本当に必要な「合理的」な保険を提案することでした。過剰な保障は不要。なぜなら、私たちは保険を「お預かりする」という意識を共有していたからです。

一方、やりがいを見失った保険代理店。 そこで強く求められたのは、とにかく「契約」でした。時には、お客様のためにならないと分かっていながら、不要な保障を提案せざるを得ないプレッシャーがありました。 社内に飛び交っていたのは、「契約をとってくる」という言葉でした。

■ 言葉が「やりがい」を殺すとき

「お預かりする」と「とってくる」。
たった数文字の違いですが、この二つの言葉の間には、天と地ほどの隔たりがあります。
「お預かりする」という言葉の主役は、お客様です。私たちはその大切な人生の一部を、責任を持って託される存在。そこには長期的で対等な信頼関係が生まれます。
しかし、「とってくる」という言葉の主役は、会社や営業担当者です。そして、こちら側が「とってくる」のであれば、お客様は必然的に「取られる」側になってしまいます。

大切なお客様が、いつしか数字を達成するための「対象」や「ターゲット」へと変わってしまう。私は、お客様から何かを「取ってくる」ために仕事をしているわけではない──。この言葉が使われる環境は、そうした心の叫びを押し殺すようで、非常に辛いものでした。

かつて銀行で「お客様のため」ではなく「数字のため」に働き、心をすり減らした経験と、あまりにも似ていました。「お客様に喜んでもらう」という私の原点が、「会社を喜ばせる」ことにすり替えられてしまう。この時、人の「やりがい」は急速に失われていくのだと、私は再び痛感したのです。

■ あなたの職場を見極めるヒント

もし、あなたが今、仕事の「やりがい」に悩んでいるなら。あるいは、これから新しい職場を探そうとしているなら。

その会社が掲げる立派な理念だけでなく、現場でどんな「言葉」が使われているかに、少しだけ耳を澄ませてみてください。面接の場で、「御社では、お客様との関係をどのような言葉で表現することが多いですか?」と尋ねてみるのも一つの手かもしれません。

そこに、その会社の「本音」と「文化」が隠れているはずです。

やりがいを左右した違いは、この「言葉」だけではありませんでした。 もう一つ、さらに意外な要因が隠されていたのです。それは、社員の働き方を根本から規定する「報酬制度」でした。

次回は、この「報酬制度」がもたらした、常識とは真逆の結末についてお話ししたいと思います。

続く・・・

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です