二組の老夫婦の話し〜喧嘩する老夫婦と仲良し老夫婦〜
山崎俊輔さんの著書「ファイナンシャル・ウェルビーイング〜幸せになる人のお金の考え方〜」を読んでいます。
第1章『どうせお金を使うなら「気持ちよく」使うクセをつけよう』(p.30〜)にこんな話が出てきます。
ある老夫婦がたまには旅行でもと思い立ち、箱根の強羅花壇あるいは富士屋ホテルのような高級旅館の予約を取りました。
ところがふたり、行きのロマンスカーに乗った段階で「やっぱりこれはムダづかいじゃないだろうか」「そっちが行きたいと言い出したんだろう」「こんな贅沢をして20年後も大丈夫なのか心配だわ」と言っています。
少し険悪な雰囲気のままチェックインしたあとも喧嘩は続き、豪華な食事は味もわからず、ふわふわのベッドも落ち着かないまま一夜を過ごします。
翌日に観光でもと繰り出してみたものの、地獄谷をロープウェイから見ていると絶望的な雰囲気となり、つい身を投げ出してしまおうかと考える始末。
最後は帰りのロマンスカーで「こんなムダづかいをしなければよかった」「言い出したのはそっちだ」と言い争いをしながら家に帰るのです。
もちろんその後数週間も不機嫌な日々が続きます。
ファイナンシャル・ウェルビーイング的に良好な状態にある老夫婦が同じ予算、同じ行程で旅行に出かけるとこうなります。
年に一度の旅行予算は資産管理上問題ないものと把握されています。ですからそもそもお金を使ってもいいのだろうか、という心配や不安はありません。
「久しぶりの箱根は楽しみだ」「夢のクラシックホテル、一度は泊まってみたかったのよ」と行きのロマンスカーでは旅行の楽しみについて語り合っています。
気持ちよくチェックインし、おいしい食事を堪能し、温泉も高級ベッドも堪能します。年金生活者向けの平日プランなので館内ガイドもついていて「ここがチャップリンが止まった部屋!」なんて喜んでいます。もちろん翌日の観光も笑顔でスタートします。
地獄谷をロープウェイから見下ろしても「絶景だねえ」とカメラを取り出しますし、むしろ「温泉卵買って帰らなくちゃ」とお土産を探す余裕もあります。
「温泉卵を食べて、寿命が伸びちゃったねえ」「次の旅行は来年として、どこに行こうかしら」と笑顔で話しながら、ロマンスカーに乗って帰宅の途につくのです。
(中略)
喧嘩している老夫婦はその旅行予算が妥当なものかイメージを持っていません。だから「こんなに使っていいのか」と不安になっています。不安があれば旅行の時間を素直に楽しめません。それでは非日常の体験から生み出す感動も得にくくなり、結果として幸福度を下げてしまいます。
仲良し夫婦のほうはおそらく、「年に一度10万円の旅行予算を設定しても、80歳くらいまで問題なくやりくりできるだろう」というイメージを持っています。冷静に考えれば10万円の旅行を65歳から15回出かけたところで150万円の予算です。月割りで考えても8,000円ちょっとの予算でしかないわけです。それが「見える化」されているからこそ気持ちよくお金を使えるわけです。ファイナンシャル・ウェルビーイング〜幸せになる人のお金の考え方〜著者:山崎俊輔氏
多くの方は、仲良し夫婦の様な人生を望まれるのではないでしょうか?
この話では、二組の老夫婦が例話になっていますが、若い独身の方でも同じことが起こり得ると思います。
著者はこんな表現もしています。
「ときどきの出費」「高額の出費」ほど気持ちよく使わないと損
私も同感です。
いかにして、「お金と『上手に』付き合うか」。
人生100年時代にこそ、大事なことだと思います。